テレセントリックレーザマーカ開発秘話

0.04mm角の印字を可能にした
“テレセントリックレーザマーカ”が誕生するまで

テレセントリックレーザマーカ MD-T1000

ワークにレーザを照射し、熱エネルギーで文字やバーコードを印字したり、繊細な穴あけや切断といった加工をしたり、さまざまな用途で使われているレーザマーカはキーエンスの主力商品の一つです。

品質評価グループの村上は入社以来、品質評価のプロとしてレーザマーカの評価・検証に情熱を注いできました。その新たな挑戦として取り組んだのがテレセントリックレーザマーカMD-T1000の開発プロジェクト。

今回のミッションは、ピンセットなどの細かな医療器具、極小のICチップなどに2次元コードを印字できる高精度なレーザマーカの開発。村上は、「レーザマーカの評価経験はあったものの、これまでのものとは求められるレベルが格段にアップしていたこともあり、相当な難易度のものになると感じていました。」と当時を振り返ります。

品質評価グループ 村上が語る開発現場

付加価値を追い求めるために、共有認識を深める重要性

今回のテレセントリックレーザマーカの開発コンセプトは、「超高精細・超安定性・高操作性」の3つを兼ね備えた商品であること。その中でも課題になっていたのが”超高精細”。従来のキーエンス製レーザマーカは、印字できる最小文字が0.1mm角に対して、それを一気に半分以下の0.04mm角まで持っていこうという計画だった。それを実現するには、1ドッドを20ミクロンにする必要があり、それを実現するためのデータ構造や演算方法に大きな壁があった。

さらに、「MD-T1000」にはカメラ画像をPCアプリ上で表示しながら位置合わせができる機能があり、当初は簡易的な位置づけの開発方針だった。しかし、デモ用のPCアプリをキーエンス担当者に披露したところ、“思った以上に使える機能だ”という話になり、大々的に商品に盛り込む事に。

品質評価を担当した村上は次のように振り返る。「1ドットのずれも許されないレベルで、キーエンスと位置合わせのロジックを完成させた商品開発グループの苦労は相当なものだったはずです。私たちの開発への取り組みは、今回のように求められたことだけではなく、付加価値につながると判断されれば商品に機能を追加してゆく。そして、そのプラスα分も品質を確保していく必要があるため、関係者間で常にコミュニケーションを取ることが大切になります。」

続けて村上はこう語る。「プロジェクト内で関係者間の共通認識を持つ事はあたり前と思うかもしれないが、現実には認識違いは発生しがちです。しかし、私たちは”あるべき姿”に対して徹底的に取り組むからこそ、付加価値の重要性が認識でき、お客様が満足いただける品質の商品を生み出すことができる。それがキーエンスソフトウェアの大きな強みだと思います。」

ただでさえ難易度の高い開発要件にもかかわらず、さらに“プラスα”の付加価値を追い求める姿勢はキーエンスとの信頼関係があるからできることであり、それをクリアできるのは当社ならではの技術力と執着心があるからこそ、である。

品質評価グループ シニアエンジニア 村上 忠
品質評価グループ シニアエンジニア 村上 忠

プロジェクトを通して
~キーエンスの営業スタッフを唸らせたMD-T1000の性能~

キーエンスと綿密なすり合わせを繰り返し、商品開発グループと品質評価グループの担当者が一丸となって情熱を注いだ結果、テレセントリックレーザマーカMD-T1000が完成。そして、キーエンス営業スタッフを対象にした新商品説明会では、その性能の素晴らしさに会場にどよめきが起こりました。

「あの時ばかりは、心の中でガッツポーズをしましたね! それまでの苦労が一瞬にして報われる至福の時間でした。同時にキーエンスソフトウェアでの開発の仕事はやりがいがあるなと。本当に自分の仕事を再確認できるプロジェクトでした」と村上が語ってくれました。

近年では部品が小型化し、さらに品質管理の強化から最小備品単位での管理が求められています。そのためには微細なマーキングは必要不可欠。それを実現したテレセントリックレーザマーカMD-T1000は、世界中の“ものづくり”の現場で活躍しています。

テレセントリックレーザマーカ MD-T1000
テレセントリックレーザマーカ MD-T1000